不老不死の科学(3) 老化が起こる本当の原因は?

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老化の原因として注目されているテロメアとフリーラジカル

老化は自然現象ではなくコントロールできる可能性が出てきた

老化は自然現象のひとつとみなされ、自然に起きていき、時の流れとともに加速してやがて身体の老化が進みいずれ死にます。それは青年期、壮年期、老年期がおとずれる身体の変化であり、誰にも等しく訪れる自然の理(ことわり)であると言われてきました。

ところが、これまではそう考えられてきたことが、その常識を覆す自然界の生き物が存在することで、大きく考え方を変えないといけないようになってきました。それは老化が自然に起きることであっても、後述するように、コントロールできる時代になってきたということを示します。

スズキの仲間オレンジラフィーという魚

オレンジラフィー

https://shimadakazuo.com/kenkou/orenjirafiiyu/

たとえば、オレンジラフィーという魚がいますが、日本ではオレンジラフィー油としても知られていて、化粧品の材料にもなっている。そして、驚くべきことはオレンジラフィー油がエイジングケアとしても使えることです。

この魚はとてつもなく長生きで平均寿命は150歳、中には200歳以上になる個体もいます。なぜ、それだけ長生きなのかの謎は未だに解明されていません。

しかし、エイジングケアとしての用途があることを考えれば、魚の中に含まれている成分が肌の代謝を高めているのかもしれませんね。

ベーリング海で捕えられたホッキョククジラ

2007年ベーリング海で捕えられたホッキョククジラも長命な生物の一つです。捕えられたホッキョククジラの頭部の脂肪層にかなり古い錨の先端が埋まっていいました。そして、その錨の年代を調査したところ、18世紀に作られたものであることがわかり、後日科学者による調査で211歳であることが判明したと言います。

一般的なクジラの年齢は数十年とされていて、その中でホッキョククジラだけが長命であるのかはわかっていない。このほかにもこの世には私たちにくらべ遥かに長命な動物が存在する。

自然界の長寿な動物トップ10

第10位 ホッキョククジラ   200年以上
第9位  
アラメヌケ                205年以上
第8位   ホンカワシンジュガイ 280年
第7位   ニシオンデンザメ   272~512年
第6位   チューブワーム              300年
第5位      アイスランドガイ   507年
第4位   ツノサンゴ      4265年
第3位     ガラス海藻類     1万1千年
第2位   ベニクラゲ      理論上は不老不死
第1位   ヒドラ        理論上は不老不死

以上が現在知られている自然界に存在する生物の年齢ですが、中でもベニクラゲとヒドラは理論上不老不死とされていたのには驚きですね。

ベニクラゲ

ベニクラゲ https://www.kaiyukan.com/connect/news/201209_post-16.html

ヒドラ

ヒドラ  https://karapaia.com/archives/52301563.html

ベニクラゲは環境が悪化したり、ある程度老化が進むとポリプとなって若返りが出来るようです。そして、ヒドラは全身の大部分が幹細胞で構成されていて老化の兆しが見えないことから理論上不老不死とされているようです。

このベニクラゲの若返り(細胞のリセット)に共通する部分がヒトの身体の中にあることが最近の研究で明らかになってきていて、その方法を利用した老化対策の研究も行われています。

老化の原因として注目されたテロメアとフリーラジカル説

前述の長生きできる生物が存在するということはどこかに寿命をコントロールしている因子があると考えるのが妥当で、これまでにも様々な老化の原因が提唱されてきました。

その代表的なものがテロメア説とフリーラジカル説です。

テロメア説

テロメア

私たちの細胞の核の中には染色体が存在しますが、左図のように染色体の末端にはテロメアというものがあります。
1961年にこのテロメアが50回から70回ほどの分裂を繰り返すと徐々に短くなっていき、短くなりすぎると細胞が分裂しなくなるということから、テロメアがヒトの寿命を決めているという説が出てきました。

テロメアは染色体が分裂するたびにテロメアーゼという酵素が働きテロメアが短くなるのを防いでいてくれています。

しかし、加齢とともにテロメアーゼ活性が低下していくためテロメアが短くなることを防ぎきれず、細胞分裂を停止した染色体をもつ細胞がが増えていき、全体として身体が老化が進んでいきます。

がん細胞ではこのテロメラーゼが活性化されているので老化が進まず際限なく細胞の複製が行われるため異常増殖してしまうという特徴があります。

こうしたがん細胞の特徴がテロメアーゼ活性を復活させることでヒトの細胞の複製を維持できるのではないかと考えられ、2015年に「PARN」というテロメラーゼの活動と関係する遺伝子が特定されました。そして、この遺伝子がテロメラーゼの「TERC」という部分の活性を左右していることがわかり、マウスを用いた実験で「TERC」が活性化されるとテロメアの長さが回復することがわかった。

これらのことから、「TERC」を活性化する薬剤の研究開発が続けられているが、活性化はがんを誘発する可能性も含んでいるので慎重に行われているようです。

フリーラジカル説

 

フリーラジカル

通常、原子というのは電子軌道上の電子が対を成して存在して安定化しています。ところが紫外線を浴びたりすると、紫外線が電子を奪い原子を不安定にします。また、呼吸をすることで体内に取り込まれた酸素が活性酸素(これがフリーラジカル)を産生します。こうしたフリーラジカルは体内でDNAの損傷を引き起こします。このDNAの損傷が細胞の変異を生み出し、それが積み重なると細胞の老化が進むというのがフリーラジカル説です。

このフリーラジカルは激しい運動、飲酒、喫煙、ストレス、偏った食生活、過剰な紫外線などによって増加すると言われ、そうした状態が長く続くと、しみ、しわ、糖尿病性網膜症、不整脈、心筋梗塞などの病気を引き起こす要因となります。

そのため、フリーラジカルでも活性の強いものを活性酸素と呼び、この活性酸素を減らすために多くのサプリメントが開発され利用されてきましたが、老化を防止するというころまで至っていないのが現実です。

テロメアもフリーラジカルも本質的な老化要因ではなかった。

老化と言うのは細胞の代謝そのものが関与しているものであり、テロメアもフリーラジカルも細胞の代謝そのものをコントロールしていないので、老化の要因ではあるけれど、本質的な老化の原因ではないことが明らかになってきました。

それでは老化の本当の原因であり、それをコントロールしているものが何かと言う研究が行われてきていて、最近になって細胞代謝の一環を担う物質としてNMN(ニコチンアミドモノヌクレチド)が老化のコントロールに関与しているのではないかとわかってきました。

そして、現在、老化のコントールが可能な成分として実用化され多くの会社で販売され多くの人に利用され始めています。特に美容関係での利用が多くなってきているようです。

 

次ページではその老化研究の進展と内容についてふれてみたいと思います。

 

 

 

 

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